
グラフィックスボードは、ゲーミングPCの性能を大きく左右する非常に重要なパーツです。
3Dゲームを高画質かつ滑らかな映像で楽しめるかどうかは、グラフィックスボードの性能によって決まると言っても過言ではありません。
近年は、アップスケーリングやフレーム生成といった技術が進化したことで、グラフィックスボードは単純な処理性能だけでなく、対応している機能も含めて選ぶことが重要になっています。
そのため、ゲーミングPCを選ぶ際はグラフィックスボードを基準に考えるのが基本となります。
現在、PC向けグラフィックスボードの主な選択肢は、NVIDIAの「GeForce」、AMDの「Radeon」、Intelの「Arc」の3ブランドです。
ただし、すべての性能や技術を理解する必要はありません。迷った場合は、GeForceを選んでおけば大きな失敗はありません。
この記事では、初心者の方でも迷わず選べるように、グラフィックスボードの選び方を分かりやすく解説していきます。
グラフィックスボードとは?
グラフィックスボードとは、GPU(Graphics Processing Unit)を搭載した拡張カードで、ビデオカードやグラフィックスカード、略して「グラボ」とも呼ばれます。
主に3Dゲームや映像処理を担当するパーツで、高画質かつ滑らかな映像でゲームを楽しむためには欠かせない存在です。

高性能なグラフィックスボードになると、マザーボードからの給電だけでは足りず、電源ユニットから直接電力を供給する「補助電源」が必要になります。
BTOパソコンを購入する場合はあまり意識する必要はありませんが、高性能なグラフィックスボードを搭載する際には、電源容量や電源ユニットの品質も重要なポイントになります。
グラフィックスボードの性能でゲーム体験はどう変わる?
FPSが高いとゲームではどう影響するの?
FPSとは「Frames Per Second」の略で、1秒間に何枚の映像(フレーム)が表示されるかを表す数値です。一般にフレームレートとも呼ばれます。
FPSが高いほど映像の動きが滑らかになり、残像感やカクつきが少ない、快適なゲーム体験になります。
なお、FPSという言葉には「First Person Shooter(ファーストパーソン・シューター)」というゲームジャンルの意味もありますが、ここで説明しているFPSはフレームレートのことを指します。
特にFPS(ジャンル)やTPSなどの対戦型シューティングゲームでは、映像が滑らかであるほど敵の動きを把握しやすくなり、一瞬の判断が求められる場面で有利に働きます。
グラフィックスボードの性能がいいとヌルヌルになる?

一般的に「ヌルヌル動く」とは、ゲームをプレイしていて滑らかに描画されている事を表す表現としてしっくりくる事から、俗語として使われています。
この滑らかさは、主にFPS(フレームレート)の高さによって決まります。FPSが高いほど映像の動きが自然になり、カクつきや残像感が少なくなります。
FPSを高くするうえで最も重要なパーツがグラフィックスボードです。
もちろんCPUなど他のパーツも影響しますが、グラフィックスボードとCPUの性能が十分に高い環境では、FPSが安定しやすく、より滑らかな表示が可能になります。
また、モニターのリフレッシュレートも重要な要素です。一般的なモニターは60Hzですが、144Hzや240Hzといった高リフレッシュレートのモニターでは、高いFPSをそのまま表示できるため、映像の滑らかさをより体感できます。
FPSやTPSなどの対戦型シューティングゲームでは、この差が操作感や視認性に大きく影響するため、高性能なグラフィックスボードと高リフレッシュレートモニターの組み合わせが好まれます。
グラフィックスボードの効果
最近の「CPU」に搭載されている内蔵グラフィックスは性能が向上しており、Microsoft Officeの利用やビデオ会議、動画視聴といった用途であれば、専用のグラフィックスボードがなくても問題なく利用できます。
一方で、PCゲームを快適にプレイするためには、グラフィックスボードが重要な役割を担います。
グラフィックスボードは3D描画性能に直結するパーツのため、性能が不足している場合や搭載されていない場合には、ゲーム中にカクつきが発生したり、安定して動作しない原因になることがあります。
PCゲームでは解像度や画質設定を調整できますが、高性能なグラフィックスボードを搭載しているほど、高解像度・高画質設定で快適にプレイしやすくなります。その反面、性能が高いモデルほど価格も高くなる傾向があります。
あなたに最適なグラフィックスボードの選び方

グラフィックスボード選びで重要なのは、性能の高さだけではありません。
迷った場合は、次の3つを基準に考えればOKです。
- どの解像度で遊びたいか(フルHD / WQHD / 4K)
- どんなジャンルのゲームを遊ぶか(FPS / MMO / オープンワールドなど)
- どの程度のフレームレートを目指すのか(60fps / 144fps / 240fps以上)
この3点を整理すれば、自分に合ったグラフィックスボードは自然と絞り込めます。
FPSやTPSなどの対戦型ゲームでは高フレームレート(144 fpsなど)や入力遅延の少なさが重要になります。MMOやオープンワールド系のゲームでは画質やVRAM容量がより重要になるケースもあります。
中でも、最も分かりやすい判断基準が「解像度」です。次の章では、フルHD / WQHD / 4K それぞれに適したグラフィックスボードの目安を紹介します。
解像度(FHD/WQHD/4K)別の最適モデル
BTOメーカーでは、GeForceとRadeonのどちらも選べることが多く、初めてゲーミングPCを購入する方は迷いやすいポイントです。
迷った場合は、GeForceを選んでおけば失敗はありませんが、価格やVRAM容量を重視する場合はRadeonも十分選択肢になります。
それぞれの違いを簡単にまとめると以下の通りです。
GeForce RTX 50シリーズは、レイトレーシング性能の向上に加え、AI性能の高さやDLSS 4への対応、NVIDIA Reflexといった独自技術を利用できます。高フレームレートや低遅延を重視するFPS・対戦ゲームを中心にプレイする方に向いています。
AMD Radeon RX 9000シリーズは、FSR 4に対応しており、AIによる描画性能の向上が期待できます。また、VRAM容量に余裕のあるモデルが多く、解像度や画質を重視しつつ、コストパフォーマンスを重視したい方におすすめです。
フルHD解像度向け
これからPCゲームを始める方には、「RTX 5060 ~ RTX 5060 Ti」を搭載したモデル、またはAMDなら「RX 9060 ~ RX 9060 XT」が選びやすい選択肢となります。フルHD解像度の高設定でプレイするのにおすすめのゲーム性能です。
WQHD解像度向け
ゲームに特化して更に快適にプレイしたい方は「RTX 5060 Ti (16GB)~ RTX 5070 Ti」またはAMDなら「RX 9060 XT(16GB) ~ RX 9070 XT」がおすすめです。WQHD解像度の重量級タイトルや、FPSやTPSなどの競技性の高いタイトルでより快適になります。
4K解像度向け
ハイエンドモデルの「RTX 5070 Ti ~ RTX 5090」は更に高い性能を持っているので、4K解像度で快適にプレイしたい方におすすめのグラフィックスボードです。
各モデルの実際の性能については、以下のベンチマーク記事も参考にしてみてください。
グラフィックスボードで重要な性能の見方
GPUの処理性能(ベンチマーク)の考え方

ベンチマークは、GPUの基礎的な処理性能を比較するための指標です。
ゲーム中のFPSを完全に保証するものではありませんが、グラフィックスボード同士の性能差やおおまかな位置関係を把握する目安になります。
特にベンチマークから分かるのは、DLSSやFSRといったアップスケーリング技術に頼らない「GPU本来の描画性能(地力)」です。
そのため、アップスケーリングに対応していないゲームや、設定を下げずにプレイしたい場合には重要な判断材料になります。
また、将来的に新しいゲームをプレイする際や、特定の機能に対応していないタイトルを遊ぶ場合でも、GPUの処理性能が高いほど安定した動作を期待しやすくなります。
一方で、注意したい点としてはDLSSやFSR、フレーム生成などの対応状況によっては、ベンチマーク上は近い性能のGPUでも、ゲーム中のフレームレートに差が出ることがあります。
特にDLSSやフレーム生成を活用できる環境では、NVIDIA製GPUが優位に立つケースがあります。
さらに、レイトレーシング性能についてもメーカーや世代によって差があり、一つのベンチマークの数値だけでは判断しきれない部分がある点も理解しておきましょう。
ビデオメモリ(VRAM)の役割と重要性
グラフィックスボードには、映像データを一時的に保存するためのビデオメモリ(VRAM)が搭載されています。
ビデオメモリを使い切ると、メインメモリーに上乗せされる形になります。するとメインメモリーは遅いのでGPUの待ち時間が増えて重くなる場合があります。
PCゲームでは解像度や画質設定を調整できるため、VRAM使用量を抑えることで動作を安定させられるケースも多くあります。
ただし、最新のゲームでは高画質テクスチャや、レイトレーシングの影響でVRAM消費量が増える傾向があります。
目安としては、フルHD環境であれば8GB以上、レイトレーシングを有効にする場合は12GB以上あると安心です。また、4K解像度や高解像度テクスチャを使用する場合には、16GB以上のVRAMを搭載したモデルが適しています。
サイバーパンク2077の推奨スペック
| 解像度と画質設定 | 推奨VRAM容量 |
|---|---|
| フルHD高設定 | 8GB |
| フルHDレイトレウルトラ | 12GB |
| 4Kレイトレオーバードライブ | 16GB |
ビデオメモリの容量の確認方法
BTOショップでVRAM(ビデオメモリ)の確認したい場合には、製品の仕様・詳細という項目に記載されているのでそちらを確認すると分かるようになっています。

また、すでに使用しているPCのVRAM容量を確認したい場合は、Windowsの設定画面から簡単に確認できます。
Windowsでは、VRAM(ビデオメモリ)の容量をいくつかの方法で確認できるため、ここでは代表的な確認方法を2つ紹介します。
- 設定→システム→バージョン情報に記載
- デスクトップを右クリック→画面下部の「ディスプレイの詳細設定」をクリック→「ディスプレイ アダプターのプロパティを表示」を開く(表示される画面の中にある「専用ビデオ メモリ」の項目が、VRAM容量です)

アップスケーリングとフレーム生成
アップスケーリングとフレーム生成は、グラフィックスボードの負荷を抑えながらフレームレートを向上させるための技術です。
アップスケーリングは、低い解像度で描画した映像を、AIやアルゴリズムを使って高解像度に再構築する仕組みです。
これにより、画質を大きく損なわずに描画負荷を下げ、FPSを向上させることができます。

フレーム生成は、描画されたフレームとフレームの間に新しいフレームを生成することで、見た目のフレームレートをさらに高める技術です。
これらの技術を活用することで、ベンチマーク性能が同程度のグラフィックスボードでも、フレームレートが大幅に向上し、ゲーム体験に大きな差が出る場合があります。
ただし、アップスケーリングやフレーム生成は万能ではありません。元となるGPUの処理性能が高いほど、画質の安定性や動作の快適さは向上しやすくなります。
また、タイトルや設定によっては、ゴースト(残像)や入力遅延が発生するケースが指摘されているため、状況に応じて設定を調整する必要がある点には注意が必要です。
現在は、NVIDIAのDLSS、AMDのFSR、IntelのXeSSといったように、各メーカーが独自のアップスケーリングやフレーム生成技術を提供しています。
そのため、プレイしたいゲームがどの技術に対応しているかも、グラフィックスボード選びの重要な判断材料になります。
最新の対応状況については、各メーカーの公式情報も参考にしてください。
レイトレーシングと最新描画技術
レイトレーシング対応グラフィックスボードとは?
レイトレーシングとは、光の反射や影の表現をより現実に近づけることで、リアルなグラフィックスを実現する描画技術です。この機能を利用するには、レイトレーシングに対応したグラフィックスボードが必要になります。
NVIDIAでは、RTXシリーズ以降のグラフィックスボードがハードウェアレベルでレイトレーシングに対応しています。
一部のGTXシリーズ(GTX 1660など)でも、ソフトウェア処理によるレイトレーシングが利用できるタイトルはありますが、負荷が大きく、快適にプレイするのは難しい場合があります。
» GTX1660Tiでレイトレが使えるのか実際にプレイしてみた
そのため、レイトレーシングを本格的に楽しみたい場合は、RTXシリーズを搭載したゲーミングPCがおすすめです。
AMDでは、Radeon RX 6000シリーズ以降のグラフィックスボードがレイトレーシングに対応しています。ただし、レイトレーシング性能ではNVIDIAのGeForce RTXシリーズが有利になるケースもあります。
レイトレーシング・パストレーシング・Lumenの違い
レイトレーシング、パストレーシング、Lumenは、いずれも「光の反射や影をリアルに再現する技術」ですが、目的と処理方法が異なります。
レイトレーシングは、光の動きをシミュレーションしてリアルな映像を描く技術で、ゲームなどリアルタイム描画でも使えるよう最適化されています。
パストレーシングはその発展形で、光の無数の反射を正確に計算し、映画やCG制作などで本物のような映像を実現しますが、処理が非常に重くリアルタイムには不向きです。しかし、GPU技術の進化によって、リアルタイムパストレーシングも徐々に現実的になりつつあります。
一方、LumenはUnreal Engine 5に搭載されたシステムで、実際の光計算を行わず、巧みに近似してリアルな照明を再現します。高速で動的な表現が可能なため、最新ゲームで広く採用されています。
| 技術名 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|
| パストレーシング(Path Tracing) | 光のすべての反射・屈折をシミュレーション。最もリアルだが超絶重い | 映画・VFX・CG作品(ピクサー、ライオン・キングなど) |
| レイトレーシング(Ray Tracing) | 光の動きを部分的に再現。リアルタイムでも使えるよう最適化 | Cyberpunk 2077などのゲーム |
| Lumen(ルーメン) | 光の反射をリアルタイムで近似する。速くて軽い | Unreal Engine 5搭載ゲーム |
メーカー別グラフィックスボードの特徴
NVIDIA GeForceの特徴

ゲーム向けグラフィックスボードとして高いシェアを誇るのが、NVIDIA社の「GeForce」シリーズです。
GPU市場において非常に高いシェアを占めており、現在のPCゲーム環境において中心的な存在となっています。
NVIDIAのアップスケーリング・描画技術(DLSS / DLAA)
NVIDIAのGeForce RTXシリーズには、レイトレーシング専用のRTコアと、AI処理を行うTensorコアが搭載されています。
これらを活用したNVIDIA独自の描画・パフォーマンス向上技術が「DLSS(Deep Learning Super Sampling)」です。DLSSを有効にすることで、高画質を維持しながらフレームレートの向上が期待できます。
※DLSSを利用するにはGeForce RTXシリーズが必須です。
DLSS(スーパー解像度)
DLSS(スーパー解像度)は、低い解像度で描画した映像をAIによって高解像度に再構築する技術です。
描画負荷を大きく抑えられるため、フレームレートを向上させやすく、アンチエイリアシング(輪郭のギザギザを抑える処理)も同時に行われるのが特徴です。
DLSS フレーム生成
DLSS フレーム生成は、GeForce RTX 40シリーズ以降で利用できる機能です。
AIが実際に描画されたフレームの間に新しいフレームを生成することで、CPUに負荷をかけずにフレームレートを大幅に向上させます。
- CPUボトルネックがある環境でも効果を発揮
- DLSS未使用時と比べて大幅なFPS向上が期待できる
- NVIDIA Reflexと組み合わさり、遅延も抑制される
「Microsoft Flight Simulator 2024」「サイバーパンク2077」「Forza Horizon 5」など、重量級タイトルでも効果を発揮します。
DLSS マルチフレーム生成
DLSS マルチフレーム生成は、GeForce RTX 50シリーズ専用の最新機能です。

1フレームの描画に対して、AIが最大3フレームを追加生成することで、これまで以上の高フレームレートを実現します。「バイオハザード レクイエム」「ボーダーランズ 4」「プラグマタ」などが対応、もしくは対応する予定です。
DLSS Ray Reconstruction

DLSS Ray Reconstructionは、レイトレーシング使用時に起こりやすい「ザラついた光」や「チラつく影」を、AIによってきれいに補正する技術です。
これまで使われていたノイズ除去処理よりも精度が高く、より自然でリアルな光や反射表現を安定して表示できます。GeForce RTXシリーズであれば利用可能です。
NVIDIA DLAA(高画質重視)
NVIDIA DLAAは、DLSSと同じAI技術を使いながら、解像度を下げずに画質だけを最大化するアンチエイリアシング技術です。
フレームレート向上が目的ではなく、高解像度・高画質を重視するユーザー向けの機能となります。DLSS フレーム生成と組み合わせて使うことで、画質とパフォーマンスの両立も可能です。
NVIDIA Image Scaling (NIS)

NVIDIA Image Scaling(NIS)は、NVIDIAが提供するドライバベースのアップスケーリング機能です。
対応タイトルを選ばず利用でき、描画解像度を下げた映像をシャープに補正することで、フレームレートの向上を図れます。
AIを用いるDLSSとは異なり、画質面では差が出る場合がありますが、幅広いGeForce GPUで手軽に使える点が特徴です。
| DLSS 対応ハードウェア | ||||
|---|---|---|---|---|
| 機能 | RTX 50 | RTX 40 | RTX 30 | RTX 20 |
| DLSS マルチフレーム生成 | ||||
| DLSS フレーム生成 | ||||
| DLSS Ray Reconstruction | ||||
| DLSS(スーパー解像度) | ||||
| DLAA | ||||
| NIS | ||||
ゲームプレイの応答性を高める技術
G-SYNC(画面のティアリング・スタッター防止)
G-SYNCは、GeForce向けの可変リフレッシュレート(VRR)技術です。GPUの描画タイミングとディスプレイの表示タイミングを同期させることで、「ティアリング(画面の裂け)」「スタッター(カクつき)」を抑え、安定した映像表示を実現します。
通常、垂直同期(V-SYNC)をオンにすると入力遅延やカクつきが発生しやすく、オフにするとティアリングが発生しますが、G-SYNC対応のGeForceと対応ディスプレイを組み合わせることで、これらの問題を同時に解決できます。
ただし、G-SYNCは対応ディスプレイが必要で、製品価格が高めになりやすい点がデメリットです。一部の高級ゲーミングノートPCでも採用されています。

また、上位規格として「G-SYNC ULTIMATE」があり、HDR対応ゲームではより高いコントラストと滑らかな表示を楽しめます。
NVIDIA Reflex(システム入力遅延の最小化)
NVIDIA Reflexは遅延を抑える、及び測定する技術です。
「Apex Legends、フォートナイト、VALORANT、BF6、オーバーウォッチ2、レインボーシックスシージ、Escape from Tarkov」など様々な対戦シューターゲームで採用されています。

ゲームの設定画面に「NVIDIA REFLEX」という項目があるので、有効化する事で遅延を短縮する効果があります。NVIDIA REFLEXはGeForce 900シリーズ以降でサポートされています。
AMD Radeonの特徴

AMDは「Radeon」ブランドでグラフィックスボードを展開しています。Radeonは、ソニーのPlayStation 5やPlayStation 4などのゲーム機にも採用されており、高い描画性能とコストパフォーマンスに定評があります。
PC向けGPU市場では、NVIDIAに比べるとシェアは控えめですが、Radeonは純粋な描画性能やVRAM容量を重視するユーザーを中心に、現在も有力な選択肢のひとつとなっています。
また、AMDはCPU分野でも強みを持っており、特にAMD Ryzen X3Dシリーズはゲーミング性能の高さで高い評価を得ています。GPUとCPUの両面でゲーム向け製品を展開している点もAMDの特徴と言えるでしょう。
AMDのアップスケーリング・描画技術(FSR / Native AA)
FSR(スーパー解像度)
AMD FSR(FidelityFX Super Resolution)は、対応タイトルにおいて描画負荷を抑え、フレームレート向上を図るアップスケーリング技術です。
FSRはハードウェアに依存しない方式を採用しているため、AMD Radeonだけでなく、NVIDIA GeForceやIntel Arcなど、幅広いGPUで利用できる点が特徴です。
RadeonではRX 400シリーズ以降、GeForceではGTX 10シリーズ以降のGPUで利用可能です。
DLSSと比べると画質や安定性はタイトルごとの差が出やすいものの、対応GPUの幅広さや導入のしやすさはFSRの大きなメリットです。
FSR フレーム生成
FSR フレーム生成は、AMDが提供するアップスケーリング技術「FSR 3」に含まれる機能で、描画されたフレームの間に新しいフレームを生成することで、フレームレートの向上を図ります。
ハードウェアに依存しない方式を採用しているため、RadeonだけでなくGeForceやIntel Arcなど、幅広いGPUで利用できる点が特徴です。
FSR 4
AMDの最新アップスケーリング技術であるFSR 4は、機械学習(ML)を活用した高品質なアップスケーリング機能です。
これは従来のFSRフレーム生成の性能をさらに向上させた技術で、低解像度で描画した映像をAIベースで補完し、高解像度表示に近い画質と高いフレームレートを実現します。
FSR 4はAMD Radeon RX 9000シリーズ(RDNA 4)向けの機能で、最新のドライバを導入することでDirectX 12対応タイトルの多くで利用可能になっています。
AMD Native AA

「Native AA」は、ネイティブの画質よりも高画質化する技術になります。NVIDIA DLAAと比較するとNVIDIA DLAAは滑らかな印象で、Native AAはシャープな印象です。
単体で使用するとフレームレートが少し低下するので、フレーム生成と組み合わせるのがおすすめです。
AMD Radeon Super Resolution (RSR)
AMD Radeon Super Resolution(RSR)は、ドライバ側で動作するアップスケーリング機能です。
ゲームがFSRに対応していなくても利用でき、描画解像度を下げた映像を引き伸ばすことでフレームレートの向上を狙えます。
画質はゲーム側に組み込まれたFSRより劣る場合がありますが、対応タイトルを選ばず手軽に使える点がRSRの特徴です。対応GPUはRadeon RX 5000シリーズ以降のGPUとなっています。
ゲームプレイの応答性を高める技術
FreeSync(画面のティアリング・スタッター防止)

FreeSyncは、AMDが提供する可変リフレッシュレート(VRR)技術で、NVIDIAのG-SYNCと同様に、画面のティアリングやスタッターを抑える効果があります。
FreeSyncは対応ディスプレイの選択肢が広く、比較的安価なモデルでも利用できる点が大きなメリットです。対応GPUはRadeon RX 400シリーズ以降となっております。
AMD Radeon Anti-Lag/Anti-Lag+/Anti-Lag 2

AMD Radeon Anti-Lagは、プレイヤーの入力(マウス・キーボード)から画面に結果が表示されるまでの遅延(入力遅延)を抑えることを目的とした低遅延技術です。GPU負荷が高い場面でも処理のタイミングを調整し、操作に対する反応をよりスムーズにします。
以前には、Radeon Anti-Lagの機能を強化したRadeon Anti-Lag+ が導入されましたが、現在は一部の環境との相性を考慮し、AMD公式ドライバーでは利用できない状態となっています。
その後登場したRadeon Anti-Lag 2は、ゲーム側と連携することで、より効果的な入力遅延の低減を目指した新しい方式の技術です。
NVIDIA Reflexと同様に、ゲーム側での対応が必要となるため、現時点では対応タイトルは限られています。利用する際は、プレイするゲームが対応しているか事前に確認すると安心です。
Intel Arcの特徴

Intel社は2022年に、独自のグラフィックスブランド『Intel Arc(インテル アーク)』を発表しました。
NVIDIA、AMDに続く第3のGPUメーカーとして参入したことで、GPU市場は選択肢が広がりつつあります。Intel Arcシリーズもリアルタイムレイトレーシングに対応するなど、技術面では着実に進化を続けています。
現時点ではゲーミング市場での存在感は限定的ですが、ドライバーの改善や対応ゲームの増加など、今後の展開が注目されています。
Intelのアップスケーリング技術(XeSS)
XeSS(スーパー解像度)
XeSS(Xe Super Sampling)は、Intelが提供するアップスケーリング技術です。低い解像度で描画した映像を高解像度に再構築することで、画質を保ちながらフレームレートの向上を図ります。
Intel Arc GPUでは専用機能を活用できるほか、一部のXeSS対応タイトルでは他社GPUでも利用できる設計となっており、対応環境の広さが特徴です。
XeSS フレーム生成
XeSSフレーム生成は、描画されたフレームの間に新しいフレームを生成することで、さらなるフレームレート向上を目指す仕組みです。
現時点では対応タイトルや対応環境が限定されており、利用できるかどうかはゲームごとの対応状況を確認する必要があります。
推奨スペック記事の読み方と注意点

ゲーム公式サイトや配信ストアに掲載されている「必要スペック」「推奨スペック」は、そのゲームが動作するかどうかを判断するための最低限の目安として参考にする情報です。
ただし、推奨スペックは「快適にプレイできる最高設定」を意味するものではなく、解像度や画質設定を調整する前提で記載されている場合も多くあります。一般的には、フルHD環境の中~高設定が想定されているケースが多いです。
そのため、推奨スペックを満たしていても、最高画質設定や144fpsなどの高フレームレートでのプレイが保証されるわけではない点には注意が必要です。
推奨スペック情報を参考にしつつ、自分が遊びたい解像度や画質設定、フレームレートに合わせてグラフィックスボードを選ぶことが重要になります。
まとめ

ゲーミングPCを選ぶうえで、グラフィックスボードはゲーム体験を大きく左右する重要なパーツです。
FPS(フレームレート)や画質、動作の安定性は、グラフィックスボードの性能やVRAM容量、対応している描画技術によって大きく変わります。
近年は、アップスケーリングやフレーム生成、レイトレーシングといった技術が進化しており、単純なベンチマーク性能だけでなく、どの機能に対応しているかも重要な判断材料になっています。
そのため、グラフィックスボードを選ぶ際は、遊びたいゲームのジャンルや解像度、画質設定、目指したいフレームレートなどを整理したうえで、自分のプレイスタイルに合ったモデルを選ぶことが大切です。
この記事で紹介した考え方を参考にしながら、用途や目的に合ったグラフィックスボードを選ぶことで、後悔の少ないゲーミングPC選びにつながるはずです。
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