PCゲームにおいてグラフィックボード(グラフィックカード、ビデオカード、GPU)の性能は極めて重要度の高い要素になります。
グラフィックボード選びは重要ですが、どれを選んだらいいのか分からないという方、コスパを考えてゲーミングPCを選定したい方、基準が分からないからみんなと同じくらいの性能は欲しいなと考えている方まで参考になるように2020年のグラフィックボードの選定の目安や方法について書いてきます。
2020年のグラフィックボードのラインアップをサクッと理解
ゲーミングPCのグラフィックボードの選び方としてはNVIDIAのGeForceが搭載されているモデルがほとんどになります。現行のGeForce製品は大きく分けて2シリーズあります。
RTX20シリーズとGTX16シリーズです。後にSUPERシリーズが投入され更に性能面がアップしました。この2シリーズは性能以外にも大きく違う点があります。RTX20シリーズにはRTコアとTensorコアが搭載されているのでレイトレーシング対応タイトルに最適化されています。
RTX20シリーズについて
RTX20シリーズはRTコアとTensorコアを持った最新のTuringアーキテクチャ採用モデルがRTX20シリーズです。ビデオメモリの規格も全てGDDR6採用です。
RTコアはDXR(DirectX Raytracing)を、TensorコアはNVIDIA DLSS(Deep Learning Super Sampling)を担当しているのでパフォーマンスを確保しつつ最新のグラフィック表現を楽しむ事ができるという大きな違いがあります。
GTX16シリーズについて
GTX16シリーズはRTコアとTensorコアを持たない最新のTuringアーキテクチャ採用モデルです。GTX1660TiだけGDDR6採用だったのですが、GTX16 SUPERシリーズに関しては無印ではGDDR5だったメモリがGDDR6メモリ採用になっています。
コストを落としながら最新ゲームのパフォーマンスを確保しているコスパラインといった印象です。
性能目安
性能目安としては以下の表の通りです。
GPU | 性能目安 |
---|---|
RTX2080Ti (11GB) | 4K重量級 |
RTX2080 SUPER(8GB) | 4K中量級+ |
RTX2080(8GB) | 4K中量級 |
RTX2070 SUPER(8GB) | 4K中量級- |
RTX2070(8GB) | WQHD重量級 |
RTX2060 SUPER(8GB) | WQHD重量級 |
RTX2060(6GB) | FHD重量級 |
GTX1660Ti(6GB) | FHD中~重量級 |
GTX1660 SUPER(6GB) | FHD中~重量級 |
GTX1660(6GB) | FHD中量級 |
GTX1650 SUPER(4GB) | FHD軽~中量級+ |
GTX1650(4GB) | FHD軽~中量級 |
4Kやるならハイエンド帯のRTX2080Tiが最適 / RTX2080 SUPERが下限です。
WQHDならアッパーミドル帯のRTX2070 SUPERからRTX2060 SUPERが最適。
フルHDならアッパーミドル帯のRTX2060からミドル帯のGTX1660が好適。
GTX1650 SUPER / GTX1650に関してはビデオメモリが4GBなので描画負荷の高いタイトルで高画質設定は厳しい印象です。画質設定を下げても大丈夫な方におすすめです。
リアルタイムレイトレーシングについて
リアルタイムレイトレーシングって何ですか?という方はこちらの動画を確認してみてください。2020年に提供開始予定となっているマインクラフトのレイトレーシングの有効・無効の動画になります。レイトレーシングを有効にするとグラフィックがすごく進化しているのがわかります。マインクラフトはパストレーシングという技法を用いて複雑な表現を可能にしているそうです。
FF15のスタッフが中心のLuminous Productionsがパストレーシングを用いた世界最高品質水準のリアルタイムレンダリングCG最新技術デモ『BackStage』を公開しています。使用しているグラフィックボードはRTX2080Tiで動作しているそうです。
リアルタイムレイトレーシングはゲーム側での対応が必要なので対応タイトルとしては多くはありませんが、2018年に登場した時から比べると増えた印象はあります。今後の対応予定タイトルとしては『マインクラフト』『Cyberpunk 2077』『ウォッチドッグス レギオン』などが対応予定。
GPU | レイトレ可否 |
RTX2080Ti | ○ |
RTX2080 SUPER | |
RTX2070 SUPER | |
RTX2060 SUPER | |
RTX2060 | |
GTX1660Ti | △ |
GTX1660 SUPER | |
GTX1660 | |
GTX1650 SUPER | ✕ |
GTX1650 |
現行ラインアップでレイトレーシング対応なのはRTX2080Ti~GTX1660までです。ですが、実質的に快適に使えるのはRTコアを搭載し、Tensorコアを搭載したRTX20シリーズになります。
NVIDIA DLSSについて
NVIDIA DLSS(Deep Learning Super Sampling)はAIの力を利用してフレームレートや画質を向上させるテクノロジーです。NVIDIA RTXグラフィックボード(Tensorコア内蔵のGPU)が必要になります。また、ゲーム側での対応が必要になります。モンハンワールドやFF15でNVIDIA DLSSのみ対応のソフトもあります。
NVIDIA DLSSを有効にする事でパフォーマンスが飛躍的に向上し画質も損なわないので対応タイトルの高解像度でプレイする場合には是非欲しい機能です。
CONTROLは今現在のレイトレーシング表現を詰め込んだ作品になっているのですが、こちらはNVIDIA DLSSとレイトレーシングがセットで使えます。
レイトレーシング対応タイトルの場合には両方使える場合が多いと思いますが、CoD:MWのようにレイトレーシングのみ使えてNVIDIA DLSSが使えないソフトもあります。
NVIDIA DLSSは上述の通りTensorコア内蔵のGPUが必要になります。現状ですとRTX20シリーズのみに搭載されています。なのでNVIDIA DLSSはRTX20シリーズのみの対応です。
価格で比較
2020年の1月時点でのグラフィックボード別ゲーミングPCのラインアップは以下になります。RTX20シリーズに関しては無印からSUPERシリーズに移行が完了している印象です。GTX16シリーズに関してはGTX1660 SUPERの取り扱いが増えている印象です。
GPU | 価格 |
RTX2080Ti | 269,980 円(+税) |
RTX2080 SUPER | 209,980 円(+税) |
RTX2070 SUPER | 169,980 円(+税) |
RTX2060 SUPER | 155,980 円(+税) |
RTX2060 | 144,980 円(+税) |
GTX1660Ti | 129,980 円(+税) |
GTX1660 SUPER | 124,980 円(+税) |
GTX1660 | 124,980 円(+税) |
GTX1650 SUPER | 取り扱いなし |
GTX1650 | 89,980 円(+税) |
構成が違うので価格に関しては目安程度に見てみてください。2020年1月現在の価格となっております。価格に関してはセールの状況によって変わってくるので以下のセール情報をチェックしてみてください。
グラボ別評価
RTX20シリーズ
仕様 | RTX2080Ti | RTX2080 S | RTX2070 S | RTX2060 S |
---|---|---|---|---|
アーキテクチャ | Turing | |||
開発コードネーム | TU102 | TU104 | TU106 | |
CUDA コア数 | 4352 | 3072 | 2560 | 2176 |
ベースクロック | 1350 MHz | 1650 MHz | 1605 MHz | 1470 MHz |
ブーストクロック | 1545 MHz | 1815 MHz | 1770 MHz | 1650 MHz |
メモリ | GDDR6 / 11GB | GDDR6 / 8GB | GDDR6 / 8GB | GDDR6 / 8GB |
メモリ速度 | 14 Gbps | 15.5 Gbps | 14 Gbps | 14 Gbps |
メモリバス幅 | 352bit | 256bit | 256bit | 256bit |
メモリ帯域幅 | 616 GB/秒 | 469 GB/秒 | 448 GB/秒 | 448 GB/秒 |
RTX-OPS | 76 T | 63 T | 52 T | 41 T |
消費電力 | 250W | 250W | 215W | 175W |
GPU | 3DMARK TimeSpy(GraphicsScore) |
---|---|
RTX2080Ti | |
RTX2080 SUPER | |
RTX2080 | |
RTX2070 SUPER | |
RTX2070 | |
RTX2060 SUPER | |
RTX2060 |
RTX2080Tiに関してはぶっちぎりの性能です。最上位モデルにふさわしいスペックとなっています。その分価格もぶっちぎりです。フルHD解像度でプレイするのならオーバースペックと言える圧倒的性能。4K解像度でゲームをプレイする為に存在するかのようなGPU。コア層に大人気。単体で実勢15~20万円オーバー。
RTX2080 SUPERはRTX2080からCUDAコア数、メモリ速度、メモリ帯域幅が微増しています。RTX2080から少し性能アップしたという印象です。RTX2080の完全体。4K解像度でゲームをプレイするならここが下限でしょう。単体で実勢9~10万円前後。
RTX2070 SUPERはコアの設計はRTX2080と同じTU104なのでRTX2080のダウンスペック版といった印象です。RTX2080とRTX2070の中間を埋める性能です。WQHD重量級タイトルでも快適に動作する非常に人気が高いビデオカードです。上位勢の×80番台と比べるとお値段も良心的なので×70番台が昔から非常に人気が高いです。単体で実勢6~7.5万円前後。
RTX2060 SUPERはRTX2060のビデオメモリが6GBから8GBになり進化を感じます。コアの設計はRTX2070と同じTU106です。スペックとしてはRTX2070相当です。フルHD重量級ゲームを快適に動作させたい方におすすめのビデオカードです。単体で実勢5万円前後。
GTX16シリーズ
仕様 | GTX1660Ti | GTX1660 S | GTX1660 | GTX1650 S | GTX1650 |
---|---|---|---|---|---|
アーキテクチャ | Turing | ||||
開発コードネーム | TU116 | TU117 | |||
CUDA コア数 | 1536 | 1408 | 1408 | 1280 | 896 |
ベースクロック | 1500 MHz | 1530 MHz | 1530 MHz | 1530 MHz | 1485 MHz |
ブーストクロック | 1770 MHz | 1785 MHz | 1785 MHz | 1725 MHz | 1665 MHz |
メモリ | GDDR6 / 6GB | GDDR6 / 6GB | GDDR5 / 6GB | GDDR6 / 4GB | GDDR5 / 4GB |
メモリ速度 | 12 Gbps | 14 Gbps | 8 Gbps | 12 Gbps | 8 Gbps |
メモリバス幅 | 192 bit | 192 bit | 192 bit | 128 bit | 128 bit |
メモリ帯域幅 | 288 GB/秒 | 336 GB/秒 | 192 GB/秒 | 192 GB/秒 | 128 GB/秒 |
消費電力 | 120W | 125 W | 120 W | 100 W | 75W |
GPU | 3DMARK TimeSpy(GraphicsScore) |
---|---|
GTX1660Ti | |
GTX1660 SUPER | |
GTX1660 | |
GTX1650 SUPER | |
GTX1650 |
GTX1660TiはTuring GTX最上位モデルになります。SP(ストリーミングプロセッサ、NVIDIAで言うCUDAコア数)が最も多いです。単体で実勢3.5万円前後。
GTX1660 SUPERはCUDAコア数が少ない分メモリ速度やメモリ帯域幅でカバーして補っています。GTX16 SUPERシリーズはGDDR6採用なのは魅力的。単体で実勢3万円前後。
GTX1660はメモリの規格がGDDR5になります。ビデオメモリの容量が6GBなので現行のフルHDゲームをある程度快適に楽しむためにはここが下限でしょう。単体で実勢2.5万円前後。
GTX1650 SUPERは格上のTU116採用モデル。GTX1660とGTX1650の中間を埋める性能です。GDDR6採用ですが容量が4GBなので描画負荷の高いゲームで高画質設定は厳しい。単体で実勢2.5万円前後。
GTX1650はライトゲーマー向けのモデルです。ビデオカード無しは非力過ぎるので最低限GPUは搭載したい方におすすめです。低消費電力で動作するという部分は魅力。単体で実勢2万円前後。
タイプ別おすすめグラフィックボード
ゲーミングパフォーマンスが高ければ高いに越した事はありませんが、予算や用途に合わせて道具を揃えるのが基本です。
4K解像度でゲームをプレイしたい方
4K解像度に対応するにはハイエンドしか選択肢はありません。RTX2080Tiがおすすめです。画質設定を調整すればRTX2080 SUPER搭載機もおすすめです。
レイトレーシング対応のゲーミングPCが欲しい方
レイトレーシング対応なのは上述の通りRTX20シリーズからが快適にプレイできるパフォーマンスを持っています。フルHD解像度やWQHD解像度でプレイする場合にはRTX2070 SUPER搭載機がおすすめです。予算を落として選びたい方はRTX2060 SUPERもおすすめです。
シューターゲームでの快適なゲーミングPCが欲しい方
FPSやTPSといった人気のシューターゲームとゲーミングPC・ゲーミングモニターの相性が良く高速フレームレート、高速リフレッシュレートで快適にシューターゲームを世界中のライバルとしのぎをけずりながらプレイしたい方におすすめなのがRTX2070 SUPER搭載機です。
現行のタイトルであればほぼ網羅する事ができる性能を持っています。CoD:MWではRTX2070 SUPERが優位スペックとして推奨されています。
コストを落として人気ゲームを中心にプレイしたい方におすすめがGTX1660Ti / GTX1660 SUPERのTuring GTX搭載機になります。フォートナイトやApex Legendsなどのタイトルでは画質設定を調整すればフルHD解像度なら3桁フレームレートを出せます。
軽めのネットゲームをやりたい方
ネットゲームなので他人に迷惑をかけたくないからハイスペックを選びたいという方や高解像度でファンタジー世界に没入したい方もいると思うのでハイスペックもおすすめですが、コストを抑えてネットゲームを中心にやりたい方におすすめなのがGTX1660Ti / GTX1660 SUPER / GTX1660搭載機になります。
ベンチマークではFF14で快適評価を出せる性能をいずれも持っています。黒い砂漠でグラフィック設定を高めてゲームをやりたい方はハイスペックモデルも検討してみて下さい。
まとめ
目安としてはRTX2060がフルHD解像度でリアルタイムレイトレーシングを体験できて重量級ゲームの対応力もあり基準値となるでしょう。ただVRAMがRTX2060は6GBでしたので8GBになりスペックも上がったRTX2060 SUPERがおすすめです。
人気度という観点からはRTX2070 SUPERが大抵人気ランキング上位常連です。コストを抑えて選びたい方にはGTX1660Ti / GTX1660 SUPER、最強スペックを目指したい方にはRTX2080Tiが人気の傾向があります。
以上、2020年のグラフィックボードから選ぶゲーミングPCの性能評価、選び方でした。参考になれば幸いです。
最新のRTX30シリーズが発売されました。こちらでベンチマーク含めてまとめているので参考にしてみて下さい。