
NVIDIAがSIGGRAPH 2026の基調講演で、DLSS 5の中身を初めて詳しく公開しました。日本時間では2026年7月21日の発表です。
DLSS 5そのものはGTC 2026で発表済みでした。ただ、あのときは短いお披露目だけ。「どうやって制御するのか」がまるで見えていなかったんですね。今回はそこを実演付きで見せています。
発表当時から言われていたのが「AIがキャラクターの顔を勝手に作り変えてしまうのでは」という不安でした。この記事では、今回公開された制御機能の中身と、まだ分かっていない部分を整理していきます。
DLSS 5の位置づけ|レンダリング後に「生成」を足す技術

DLSS 5は、ゲームが普通にレンダリングし終えたフレームに対して、AIによる生成のステージを後ろから足す仕組みです。
NVIDIAはこれを、リアルタイムレンダリングにおけるAI活用の3番目のカテゴリだと説明しています。1つ目が再構成(少ない情報から本来の絵を復元する。従来のDLSSがこれ)、2つ目が関数近似(重い計算を小さなニューラルネットで肩代わりする)。3つ目が生成です。
大事なのは、DLSS 5がジオメトリ(3Dモデルの形そのもの)に手を触れない点。形はレンダラーが決めたまま、見た目の質感だけを底上げします。肌の光の透け方、髪に当たる光、接触影、環境光あたりが対象です。

講演では植物のシーンが分かりやすかったですね。レイトレーシング済みでも葉っぱがどこかプラスチックっぽい。DLSS 5をオンにすると光が葉を透過して、一気に生きている質感になる。この手の表現は従来のレンダリングだと計算コストが跳ね上がるので、まるごとAI側に投げてしまおうという発想です。
AI生成への懸念|顔と作風が変わるという指摘

GTCでのお披露目直後、映像が「AI生成くさく見える…」という強い批判が出ました。核にあったのは、AIが作品のアイデンティティを勝手に書き換えてしまうんじゃないか、という疑いです。
NVIDIA側もこの問題を正面から取り上げています。講演では、主人公の顔に傷があるとして、モデルがそれを「汚れ」と判断して消してしまう例を挙げていました。
絵としてはきれいになる。でも別人になってしまう。映像に手を入れても、作品が語っているものまで変えてはいけない、という言い方をしています。
対策として使われているのが、レンダラーの内部バッファです。
アルベド(素材そのものの色)、法線(面の向き)、ライティング情報。この3つをAIに読ませて「何を守るべきか」を理解させた上で、その制約の中でだけ質感を豊かにさせる。プロンプトや参照画像のような曖昧な指示ではなく、ゲーム自身が吐き出したデータで縛るわけです。
開発者向け制御機能|モデル選択・強度調整・マスク

今回いちばん新しいのがここです。制御は大きく4段階ありました。
3つのモデルから選ぶ
DLSS 5には現時点でモデルA・B・Cの3種類があります。学習パラメータが違うので出力の傾向も変わる。ゲーム全体で1つに固定される仕様ではなく、シーンごと、カットシーンごとに切り替えられます。
強度スライダーで全体を調整
Structure Intensityが高周波のディテール、Tone Intensityが低周波のディテールとライティングを担当します。
ざっくり言うと、前者はアンビエントオクルージョン(物と物の隙間にできる陰)や反射、肌の光の散乱あたりを足す方向。後者はもっと表現寄りで、動かすと色味そのものが変わります。

実演では同じモデルで強度25%と95%を並べていました。25%はレンダリング結果に近く、95%が今のDLSS 5で出せる上限に近い絵。どこに置くかは開発者が決めます。
モデル側の自動マスク

DLSS 5はフレームの中身を意味として理解しているので、「キャラクターだけ」を自動で認識してマスクできます。背景はオフ、キャラだけオン、という切り分けがモデル単体で成立する。ここは面白いところでした。
エンジン側のマスク
小物レベルの指定はゲームエンジン側から行います。デモでは水差し、ぶどう、ボトルにマスクを掛けて、それぞれ強度とトーンを独立に動かしていました。マスクの数に上限はないとのこと。
つまり「背景の植物はフォトリアルにしたいけれど、主人公の顔には一切触らせたくない」という指定が通ります。批判に対する回答としては、かなり具体的な部類かと思います。
映像の安定性と処理コスト
止め絵がきれいでも、動いた瞬間に破綻したら意味がありません。
動画生成モデルは普通、複数フレームをまとめて処理します。ゲームでそれはできない。プレイヤーの入力に即座に反応して1枚ずつ出す必要があります。
DLSS 5は未来のフレームを覗かず、1フレーム入力・1フレーム出力で処理する設計です。モーションベクター(前のフレームから何がどこへ動いたかの情報)を使うことで、チラつきや輪郭の滲みを抑えているそうです。
動作環境がまだ確定していない
GTC 2026の初期デモではRTX 5090を2枚使用し、1枚でゲームをレンダリングし、もう1枚でDLSS 5のモデルを動かしていました。
NVIDIAは製品版について、1枚のGPUで動作するよう最適化すると説明しています。ただし、対応する最低GPU、必要なVRAM容量、フレームレートへの影響はまだ確定していません。
対応予定タイトルについて
SIGGRAPH 2026の基調講演では、新たな対応タイトルは発表されませんでした。
ただ、NVIDIAはGTC 2026の時点で、『Resident Evil Requiem』『Starfield』『Hogwarts Legacy』『Assassin’s Creed Shadows』『Phantom Blade Zero』『The Elder Scrolls IV: Oblivion Remastered』など、DLSS 5対応予定の15タイトルを公式に発表しています。
DLSS5が来る2026年秋に向けて
今回の発表で分かったことを整理します。
- DLSS 5はレンダリング結果を尊重して質感だけを足す技術で、形は変えない
- モデル3種類、強度スライダー2種類、モデル側とエンジン側の2階層マスクで細かく制御できる
- 1フレームずつ処理する設計で、動いたときのチラつきに対策済み
- 提供開始は2026年秋。動作環境と対応タイトルは未発表
今の時点で快適に遊べるPCを探しているなら、まずは今のDLSSとレイトレーシングをどこまで使いたいかで考えるのが現実的です。
GPU別の選び方は関連記事にまとめているので、あわせてチェックしてみて下さい。




